生絹と練絹

繭から糸をひいたばかりの繭糸は、フィブロインとセリシンというシルクプロテインからできています。2本のフィブロインを覆い包むようにセリシンが取り巻いて1本の糸状になっていて、フィブロインが70~80%、セリシンが20~30%の構成となっています。

皆さんの知っている光沢のある一般的な絹糸は、生糸からセリシンを精錬して取り除いた、フィブロインだけの状態の糸の事を言い、練糸(ねりいと)とも言います。練糸で織られた織物を練絹(ねりぎぬ)と言います。

その反対でセリシンを残したままの生糸で織った平織りの絹布のことを生絹(すずし・きぎぬ)と言います。

生絹(すずし・きぎぬ)の特徴

生絹を使ったボディタオル

固く張りのある感触で、見た目は通常のシルクよりもクリーム色で、少しごわごわした感触ですが、それがセリシン由来の特徴です。セリシン含有のボディタオルやミトンの使用時に水に湿らすと「ぬめり」を感じると思いまが、そのぬめりの正体が、まさにセリシンです。

セリシンは非常にお肌に馴染みやすいと言われていると共に、保湿成分として有名なコラーゲンとセリシンの保湿性を比較した場合、長時間に渡り保湿する力はセリシンの方が優れていることが分かっています。また、最近の研究で、セリシンには抗酸化作用とメラニン色素合成阻害作用を有することが確認されています。

セリシンはお湯や石鹸、アルカリ性溶液、洗濯時に少しずつ溶け出します。また紫外線の光によってメラニンに変化し、生地が黄変・劣化します。

生絹は古くは源氏物語や枕草子にも「生絹(すずし)」と記載があり、昔はセリシンを取り除く技術が不十分であったため絹織物というと生絹の状態でした。十二単の色の組み合わせ(襲の色目)はこの生絹の透け感とを前提として楽しまれました。

練絹(練絹)の特徴

練絹を使ったボディタオル

フィブロインだけの状態になっているため、フィブロイン特有の艶やかさ、柔軟さとコシの強さを併せ持つ風合いです。また精錬の工程でフィブロイン繊維の中に無数の隙間ができるため、湿った空気をよく吸収し、余計な湿気を放出します。

フィブロインは極細の三角形の繊維からできていますが、内部には細かい隙間が多いため摩擦に弱く、繊維を擦ると表面が剥がれ、繊維がささくれます。ボディタオルやミトンとして使用する場合、そのささくれがお肌の不要な角質や毛穴の汚れに引っかかり、お肌に負担をかけることなく取りきます。